(あなたが走り出すと、後ろの存在もあなたを追うようにガサガサと物音を立ててついてくる)

(しかも速い…!)


(恐怖で足元が覚束ず、躓き転んでしまうと後ろの物音が更に距離を詰めてくる)


(捕まる…!)


(近づいてくる物音と迫り来る大きな影に恐怖し、ぎゅっと目を閉じた)



…待って!

君、大丈夫…?



(……ん?)

(敵意を感じない柔らかで穏やかな声に、ゆっくりと目を開く)


よかったぁ…君、走るの速いよ…
転んじゃってたけど大丈夫か?怪我とかしてない?


(開いた瞼のその先にいた存在は、マフラーを巻いた大きなクマだった)



(…クマ?)


(そうか、だからさっきの狼は危険だって……あの狼の話は嘘じゃなかったんだ…!)




ある日の森の中③2