行方不明になっていた下っ端集団のうちの一人が戻ってきたのは、翌日の朝の事でした。

「…まさか戻ってくるとはなぁ…」

「…こんな形で、ね…」

呟くのは隊長とルッス先輩。
ベルセンパイはといえば、まだ起きて来ない。
昨夜いつまで天井をいじめ続けたのか、果たしてそんな手の届かないところに突き刺しまくったナイフをどうしたのか、そんな事をぼんやりと考えながら二人の間を覗き見れば、そこには一つの黒い塊がありました。

元は黒と白の隊服を着ていた、人間であったはずのもの。

ちらりと見ただけで、その黒は血が変色したものだとわかりました。
体中が傷だらけで、指先にあるべき爪はすべてついていなくて、何やらあり得ないところから無造作に針やら刃物やらが飛び出していて、うえ、悪趣味ー。
それ以上はつぶさに観察する気も失せて、目を逸らそうとしたその時、視界に飛び込んで来たのは、ミルフィオーレの紋章。
それは、その男の死体の額にしっかりと、焼き付けられた烙印でした。

「拷問された後に殺された、って感じですかー」

「わざわざ送り届けてくれるところがイヤラシイじゃなーい?」

「お前らの情報は手に入れたぞ、っつう事が言いてぇのかぁ…
ナメられてんなぁ、完全に」

いなくなったあの集団の中の一人が、敵に捕まっていた、という事だけはわかった。
この男の他のメンバーはどうなったんでしょうか。
例えば、この集団のトップを任されてたあの男は。
それと…ベルセンパイが気にかけているあの子は。
彼らも捕まって殺されたのか、逃げられたのか、捕まる前に死んだのか、もしかしてまだ生きたまま捕まっているのか…

逃げられた、以外の可能性はどれを取っても、良い想像はできませんねー…


2年7