ノックの主を目にした瞬間、眠気は吹っ飛んだ。
「あ…れ…?
せ、先輩!?
もうお休みになったんじゃー…」
「来ちゃ悪いかよ」
「いえ!そんなことは!」
言いながら、私はヨダレとか垂らしてなかっただろうか、と思って慌てて口に手をやった。
この人は本当に気まぐれだ。
こんな風に私の部屋を訪ねてくる事なんて滅多にないのに、こんな時に限って。
緊張して背筋を伸ばす私の頬を、突然ベル先輩の手がわしっと掴んだ。
恐らく、むにゅっと唇を突き出した変な顔になっているであろう私を、ベル先輩はまじまじと見る。
なんだろう、本当にヨダレ垂れてたんじゃ…いや、だったら掴まないか、掴みたくないか。
ベル先輩が何を思って人の頬を弄んでいるのか知らないが、私は彼にじっと見つめられているという、その希有な状況にますます緊張した。
言ってしまえば、ドキドキしていた。
別にベル先輩は私に対して色気のある思考などしていないであろうというのはわかっているけど、それでも、好きな人に顔を触られて見つめられたらそうなるじゃないか。
気取られないように平静を装って、というか、意味がわからなくて本気でぼーっとしていたのもあるけれど、私は彼の顔を黙って見ていた。
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