ベル先輩とは真逆の、いたって冷静な口調で、フラン先輩は言う。
ベル先輩は、その言葉にしばらくぽかんとして、それから俯いて『はぁー』と溜息を吐いて、ばつが悪そうに頭を掻きむしった。

「…お前にそんな心配されたくないね」

とは言ったものの。
あ、いつものベル先輩、と私も思った。
我を忘れて暴走しかけていた彼の醸し出す緊張感が、今やっとぷっつり途切れた。
緩やかに弧を描く口元を見て、私は少し安心した。

「センパイ、落ち着きましたー?」

「オレはいつだって冷静」

「ウソつき。
まあいいですけどー。
頭が冷えたなら、行きましょうかー。

見てみたいって思ってたんですよー。
怒りんぼのうちのボス、本当に強いのかなーって」

「急がねーと終わっちまうぜ。
ったく、お前が戦わねーから」

「しょーがないじゃないですかー…」

雑談を交えながら、二人はさっそく動き出した。

「あ、ま、待って下さい…!」

結局私はいつも背中を追うばかりなのだ。
隣には並べない。

でも、追うべき背中がまだそこにある。
私をどこまでも走らせる。


2年39