潰れたトマトみたいな二つの死体の前で、せんぱい、せんぱいと馬鹿のように繰り返す私のもとに、ゆっくりと彼は降りて来た。
金の髪、白い服。
まるで、

天使。

なんて思うわけない。

ジルというのはラジエルの愛称で、ラジエルというのは天使の名前なんだそうだ。
ベルフェゴールっていうのは悪魔の名前、親にも見放されてたってわけだな。
と、私を部屋で拘束していた時に彼が得意げに語っていたのを思い出した。
目の前で笑っているこの男が天使だって言うなら、この天使は狂ってる。
悪魔の弟の方も相当狂っていたけど、こっちだって負けてない。
天使なんてそんな清らかなモノじゃないのは、二人とも同じ。

同じだけれど、私が好きだったのは狂った悪魔の方で、それを殺したのが狂った天使で、それを目の当たりにした私は紛れもなく普通の人間だけど、今この瞬間、狂った人間になるんじゃないかな、と思った。

「逆になっちまったなぁ。
お前を殺してからこいつらを殺るつもりだったんだけど…

まあいっか。
相当衝撃受けてるみたいだし、むしろこっちの方がよかった?
結果オーライって事で。

———じゃ。

XANXUSが控えてるしな。
これ以上お前に時間かけてらんねーんだわ。
あの世で仲良くやれよ。
センパイが待っててくれんだ、寂しくないだろ?」

実際には、狂う暇もなかったのだ。
私の周囲を、狂った天使が操るコウモリが囲んでいる。

「3、2、1…

ドカーン!!」


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