「—————せぇよ」
「ん?」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよお前」
ベル先輩の、声。
私は一瞬耳を疑った。
だって、先輩の声じゃないみたいだった。
いつでもやる気なさげで適当で面倒そうに話す先輩の、あの声じゃ、ないみたいに聞こえた。
先程のミンクの炎の熱、あれも一歩間違えば私をも焼き尽くし死に至らしめるであろう灼熱だったけれど、今の先輩からは、それすら上回るような熱を感じた。
先輩、怒ってる。
こんな先輩を見るのは初めてだった。
だって、敵に挑発されたって、それを更にムカつく喋りで挑発し返して、さらりとやっつける。
それが私の知ってるベル先輩だ。
こんな風に、あからさまに燃えるような怒りを見せた事なんて、なかった。
初めての殺しに手を染めてしまう程に嫌いだったその人に馬鹿にされたわけだから、逆鱗に触れたのかもしれない。
なんだか申し訳なくなった。
私が捕まったせいで、ヴァリアー丸ごと馬鹿にされたようなものだ。
ごめんなさい先輩。
「くだらねー小細工してんじゃねーよ。
人質でも取らないと勝てないってワケ?」
「しししっ、誰もあの女を盾にして戦おうなんてしてねーし。
…っていうか、何そんなに怒ってんの?
もしかしてお前、」
「だから」
こういうの、逆上、っていうんだろうか。
先輩の声が腹の底に響く。
怒りに満ち満ちた声が。
「だからうるせぇって言ってんの」
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