彼はその長い脚で無造作に、まるで虫けらでも扱うように私を蹴飛ばした。
その反動で仰向けに転がされた私の、今度は腹の上に容赦なく足を乗せ、体重をかける。
呻く私をそれは楽しそうに見下ろして、彼は笑っている。
そして饒舌に何か喋っていた。
その内容は主にベル先輩への侮辱の言葉と、彼自身を礼賛する言葉だったように思うが、私はろくに聞いていなかった。
死んだはずの人間が生きている、ってどういう事だ。
先輩がその昔殺し損なっていたって事なのか、それとも…
蘇った?
死者蘇生だなんてそんな事、あり得ない、不可能だ。
でももしそれが敵の、白蘭かもしくはその配下の者の能力によるものだとしたら。
私は、ジルと名乗った彼が私の腹に足を乗せたまま歪んだ笑顔で滔々と語っているのを聞き流しながら、そんな事を真剣に考えていたのだ。
もしそんな事があり得るのだとしたら、ボンゴレの勝ち目は…
というかそれどころの話じゃない、世界がひっくり返る程の事なんじゃないのか。
今まさに私に危害を加えている彼よりも、私にはその事の方が空恐ろしくて大ごとだと思った。
だからそのよく動く口を見つめていながら、実際目に入っていなかった。
それが、彼は気に入らなかったようだ。
「聞いてんのかよ」
彼は私の腹を強く踏みつけた。
う、と呻き声が漏れる。
「…ムカつく顔してんなぁ、お前」
なんという事だ。
ろくに口も出さずにただ足蹴にされて転がっていただけだというのに、早速私は彼の神経を逆撫でしたらしい。
大嫌いな弟の名前で彼を呼んだ事も、唯一発した言葉は彼の大嫌いな弟を擁護する言葉だけだった事も、その後の話を聞いてない事も、全部気に食わなかったと見える。
「決めた、やっぱお前は———ベルの目の前で殺してやるよ」
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