彼の顔から、表情が消えた。
底冷えするような冷たさと焦げ付くような熱と、両方を孕んだ視線だけが私の肌を突き刺す。
私も負けじと目を逸らさずにいるが、彼が何を考えているのかわからない。
底なしの暗闇を見つめている気分になる。
そして。
しばらくの間私を縫い止めていた目線がふと外れたかと思うと、彼は白い喉を反らせて大きく笑い声をあげた。
何がそんなに面白いのか、と思う程に、大袈裟なまでの高笑い。
私が呆気に取られていると、ぴたりと笑い声が止む。
その唐突さにまた私は唖然とする。
笑いの余韻を称えた顔で、彼は立ち上がり、私に歩み寄った。
「へえー、そう、そういう事か。
あのクソ弟」
……………弟?
「何をやっても敵わなかった相手を殺したつもりのアイツは、オレに代わって天才を名乗ってるワケだな。
ヴァリアーの幹部なんてやってるんだろ?
後輩にでかいツラして『オレは凄いんです』って思い込ませてんだ。
———笑い話だな」
殺したつもりの———?
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