もう一度眠りにつこうとして布団を被ったけど、なんだか寝付けない。
10年後の世界に来れるなんてレアだけど、状況が状況だけに気が休まらないし、このベルとの微妙な距離感が気にならなくもない。
「ごめんな」と、私を抱きしめたあの時の顔を思い出す。
10年後の私が、ベルと別れてどんな気持ちでいたのかは知らない。
何せ、別れる口実にベルは結構な暴言を吐いたそうだから、さすがに怒ったかもしれないし悲しんだかもしれない。
最低!!って思ったかもしれない。
でも、あのベルの辛そうな表情を思い出すと、許してやって欲しいな、誤解だからわかってあげてくんないかな、って思ってしまう。
16歳の時とおんなじに、大事に思ってくれてるのがわかるから。
布団にくるまってそんな風に考え事をしていると、暗闇の中で、ベルが私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
返事をしそうになったけど、どうやら半分眠っているみたいだったから、起こさないように黙っておいた。
多分、今ベルが呼んだのは私じゃない。
私だけど私じゃない。
その声に応えてあげられるのは、今の私じゃない。
私は私なのに、なんだかもどかしい。
16歳の頃の、ノー天気なベルの笑顔が、ちょっと恋しくなった。
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