左手の剣から血がボタボタ滴っている。
彼自身も返り血(だと思う)で真っ赤だった。

衝撃的なスプラッタ映像に一瞬気が遠くなる。


「ちゃんと掃除してきたのかよ」

「フン、本当に雑魚ばかりだったぜぇ。
ナメられたモンだな」

「しょーがないよ。
オレらが来るとは思ってなかったんでしょ、向こうも」

「…間に合ってよかったなぁ、お前。
情報が入るのがあと一歩遅かったら…間違いなく死んでた。



……………


オイ、大丈夫かコイツ。
ポカーーーーンと口開けやがって」

「無理もないよ。
だって10年前から来たばっかりみたいだからね」


…10年前?


「ま、こんなとこでゆっくり説明してるヒマはねえぞぉ。
また襲われたら面倒だ。
さっさと引き上げんぞぉ」

「…そういう事で。
ちょっと歩くよ。
ついてきて、お姫様」


そう言って、彼は私に手を差し伸べた。
まったく状況が飲み込めなかったけど、やっぱりこの人は私のよく知る恋人に違いない。
私のようなただの普通の人間をお姫様扱いする人なんて他にいるわけない。
そう思ったら、ためらいなくその手を掴めた。

私が手を握ると、彼は満足げに微笑んで、私の手を引いて歩き出した。

1年6