しばらく歩いた後、その人は私をゆっくり腕から下ろすと、私の顔を拭った。
「…目。開けていいよ、もう」
言われてやっと目を開ける。
金色の髪。
目を覆う長い前髪に、キラキラ光るティアラ。
こんな頭して歩いてる人、一人しかいない。
でも、私の知るその人とは何かが違う。
並んで見上げる目線も、服の袖で私の頬を拭う手の大きさも…
私の頬に飛んできたしずくを拭った彼の袖が、べったりと赤い事に気付いてぎょっとした。
…助けてくれた、のだろうけど。
なんだこの状況。
いきなり血なまぐさい事になってて、背筋がすうっと寒くなる。
「…怖かった?
ごめんな」
そう言って、彼は私を抱きしめた。
その直前の表情が、目に焼き付く。
本当に辛そうで、申し訳なさそうで、
なんだか泣き出しそうに見えた。
私が知るそれよりも少しだけ大きな身体で、彼は私を強く抱きしめ、何度も何度も謝った。
何を謝られているのかその時はわからなかったけど、彼があんまり真剣だったので、慰めてあげなきゃいけないような気になって、おそるおそる私は彼の背中に手を回した。
「生きててくれてよかった、本当に…」
ちょっと待ってよ。
だからどうして私は殺されそうになってるの?
ここどこ?
あなた誰?ベル?だとしたらなんでいつもと違うの?
「会いたかった」
吐き出すように彼は言う。
私の記憶が正しければ、ベルには昨日会ったばかりのはず。
なんでそんな言い方するんだ?
私の頭が疑問符でいっぱいになっていたその時に、
「人に雑魚掃除させといて何やってんだお前らぁ!!」
また私の頭を混乱させる人が出てきた。
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