覚悟した衝撃は降り掛かってこなかった。

代わりに、男達の悲鳴と、顔に飛んできた生温かいしずく。

そして、

「そのままちょっと目瞑ってて」

と。

聞いたことあるような、ないような、知ってるような、知らないような、大人びた声が頭の上から降ってきた。
言われたままに目を閉じていると、そのままふわっと身体が浮いた。
抱き上げられて、ゆっくりその場から遠ざかる。

「う゛お゛ぉい！！
後はオレ任せかぁ！？」

「お前にやるよ。
がんばってー」


……………

今の。

あんなバカでかい声をあげる人、私は一人しか知らない。
でも、聞き慣れたあの声とは、ほんの少し、何かが違うような気がする。

私を抱き上げるこの人も。
声も、その腕の感触も、私が知ってるそれとは、何かが。

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