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日本に来たのは随分久し振りだ。
頬を撫でる風は穏やかで、少し前までこの国でも、戦争と言ってもいいくらいのバトルが繰り広げられてたなんて信じらんないくらい。
とは言っても、それを知るのはほんの一握りの人物だけで、誰もが何も知らずに普通の毎日を送ってたはずだけど。
これから訪れる、彼女の実家に居る人達もそう。
みんな、何も知らない、普通の、日本人。
「ティアラは外してよね」
「わかってるよ」
「その髪型はなんとかならないのかなぁ!?」
「これはどーにもなんないね」
「…打ち合わせ通りにね?」
「大丈夫、うまくやるよ。
お前の親、心配させたくないし。
快く送り出してもらいたいからね」
オレだって、緊張してないわけじゃないんだけど。
なんたって、いわゆるアレだし、「娘さんを僕に下さい」的な。
結婚報告、ってやつ。
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