どう使うのかよくわからない機能もついてたけど、基本の形は今の携帯と変わりなかった。
データフォルダの写真を見る。
「撮らないで」って感じで、笑って手を前に出しているこの写真…これがもしかして、10年後の私だろうか。
多分ベルがふざけて撮ったんだろうな。
ブレてるし手が邪魔で顔はよくわからないけど、楽しそうな雰囲気だけは伝わってきた。
他の写真も、残念ながら人がハッキリ写っていないけど、なんとなくこの時代の私の生きる空気が伝わってくる。
失敗ぽい写真も結構ある。
携帯カメラの性能が上がっても、自分の腕はあがってないらしい。
電話帳やメールボックスに並ぶ名前は、見知ったものもあれば知らないものもある。
この知らない名前はきっとこれから出会う人なんだ。
ちょっとワクワクする。
一体どんな出会いがあるのか、どんな関係を築くのか、楽しみにとっておきたいような気がして、私はあえてメールを開かないでおいた。
そして。
いつかこの時代の私が、ここに戻ってきてこの携帯を手にする時が来るのかな。
来て欲しいな。
ちょっとだけ期待を込めて、私は新規メール作成ボタンを押した。
「何やってんの?
そろそろ片付けろよ?他に出した物も…」
スクアーロとの喧嘩に飽きたベルが、声をかけてくる。
うん、と返事をして、私はにっこり笑った。
何笑ってんの、と聞かれたけど、それは秘密だ。
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