好きだなんていつも言ってる。
どれだけ好きかも、いつも全身で表現しようとしてるのに、それでも彼女はまだ欲しがった。
「ラブレター書いて欲しいな」なんて期待で満ちた目で言うんだ。
手紙というヤツは、形が残ってしまう分、口や体での表現よりよっぽど恥ずかしくて、しかもラブレターなんて言ったら、死ぬほど痛々しいものが出来上がるに決まってる。
さんざん拒否った結果、彼女は少し機嫌を損ねた。
なんだよ、知ってんじゃん、好きなのはさ。
なのになんで更にそんなもの欲しがるわけ。
それを可愛いと思ってしまったから、オレの負け。
誰にも解読できない文字を開発したなら、誰にも、彼女にも読み取れないなら、恥ずかしい愛の言葉を形にしてやってもいい。
そう思ってしまった。
書き上がった暗号文は、誰にも、彼女にも読み取れないはずなのに、それでもオレにとっては「なんでこんな恥ずかしいことを文章にして紙に残してしまったんだ!!」と死にたくなるくらいの破壊力があった。
やっぱり捨てようと思ったのに、解読できないくせにそれは嬉しそうに欲しがる彼女を見ていたら、無理矢理奪うことはできなかった。
ねえお前わかってんの。
それ、どれだけ恥ずかしい事が書いてあるかわかってんの。
早く忘れちまえ、気付いたらゴミと一緒に捨ててた、そんくらいでいい。
そう願ってた、のに。
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