なんつーところに遭遇してんだオレは。
間が悪いにもほどがある。
「あ…すぐに返事もらえなくてもいいから。
少し、考えてよ。
けっこー前から…好きだったから」
アイツが返事をする前に、男は早口で捲し立てる。
イヤ、返事させてやれよ。
断らせてやれよ。
…断ってくれるハズだから。
「じゃ、また!」
言うだけ言って、相手に何も言わせずに、逃げるようにそいつは帰っていった。
見ろ、オレの可愛い恋人は、断るタイミングすら与えられなくて呆気にとられてる。
「何、今の…」
ぽつり、と呟く声が聞こえた。
アイツの反応がその程度で、オレはホッとする。
…けど。
会う気が失せた。
なんとなく。
暗い夜道を、オレは一人引き返す。
なんでだろう、オレも逃げるような気分で。
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