待っててくれて、ありがとう。

無言のまま抱きついてくる彼女を、オレは受け止めてできるだけ優しく背中を撫でた。
懐かしい匂いがする。
大好きな人の匂い。
ずっとずっと、焦がれてた。

「待っててくれてありがとう、本当に」

いつの間にか涙で濡れていた彼女の顔をそっと上げさせて指先で拭った。
彼女は、涙目のまま恥ずかしそうに笑う。
そして、そっと顔を近づけてきた。
冷たいオレの唇に、あたたかい感触。
生き返った心地がする。

オレらのお話は、王子のキスでお姫様を目覚めさせる方じゃなかったらしい。
アレだ、愛する人のキスで、王子の呪いが解けるっていうやつ。
あっちの方だ。

半年28