傷が浅いうちに、とスクアーロは言った。
正直、今となってはもう浅い傷では済まされない。
多分、相当の深手になる。
でもいつか、オレについていけないと悟ったアイツから別れを切り出されるよりは、今ここでオレの方から断ち切った方が幾分かマシな気がする。
幸い、今のアイツには、守ってくれそうな男もいる。
失恋の痛手を癒してくれそうな、人の良さそうなあの男。
アイツが好きなら、ちゃんと優しくしてくれるだろう。
傷心のとこ優しくされるの、女は弱いらしいから、あの男にとっても頑張りどころだろうし。
二人の並ぶ後ろ姿は、まるで普通の恋人同士に見えなくもなかった。
他愛ない話題で笑い合って。
人目を忍ぶ必要もなくて。
想像してみても、悪くなかった。
アイツと、あの男。
オレが隣にいる図よりも、なんだか自然で、微笑ましい感じがする。
ちょうどよかった。
オレの席を、譲ってやろう。
アイツの隣…オレには似合ってなかったらしい。
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