(そのまま、彼はくるりと背を向けた。

何か言いたいけど、声が出ない。
足が震えてる。



怖い。


無邪気で人なつこい彼の笑顔を覚えてる。
でも、全部さっきの冷たい笑顔に、狂気を孕んだ表情にかき消される)




「好きだった」


(風に消えてしまいそうな、小さな小さな声で、)



「好きになって欲しかった」


(彼は確かにそう言った。


そしてそのまま、夕闇の中に消えていった)

出会い19