(なんとなく声かけにくくて、黙ったままで近くまで歩いてきてしまった。

なんであんな怪我してるんだろう…?

後ろから、ベル、と名前を呼んでみる)

「…今日は会いたくなかったんだけど」

(こっちを振り向かずにそう言った。
…会いたくなかった…か…)

「こーんなボロボロの姿、カッコ悪ィ。
ま、勝ったんだからいーんだけどさ」

(と、首から下げたアクセサリーを掲げる。
勝った?ってなんだろう)

「それに…ちょっと考え事しててさ。
オレもう帰るし。
お前も、うろうろしてないで帰れば?」

(と言って、立ち上がる。
なんか冷たい。

立ち上がったベルのそばに、薄汚れた痩せた子犬がいるのに気付いた)

「…捨て犬みたいよ。
だいぶ弱ってる。そろそろ死ぬな」

(…かわいそう…思わず手を伸ばそうとすると)

「やめとけば?
捨て犬全部拾って飼ってやれるワケでもあるまいし。
ほっとけば、土に還るよ」

(…冷たい…)

「…関係ないヤツの命の心配できるヤツの気持ちこそ、オレにはわかんない。

やっぱ…違うな」

(違う?)

「なんでもない」

出会い16