名前:巽幸太郎と伝説のフランシュシュ

蘇った回数58.SAGA

ナイスよかったい

元中学教師
「矢的猛(やまとたけし)です。みなさん、わざわざ佐賀からお越しいただき感謝します」

純子
「や・・・矢的先生」

【遡ること1979年の春】

矢的猛
「教育実習生の矢的猛です!みんなよろしくな!」

紺野純子(中学3年)
(元気な人・・・私とは話が合わなそう)

矢的猛
「僕はまだ本物の先生ではない!でも、だからといって決して君たちに対して半端に向き合おうとはしない!だから君たちも全力で僕にぶつかってきてほしい!」

純子
(凄い先生だな・・・私だったらあんなに堂々とできない)

【まだ教育実習生だった矢的猛は不器用ながらも生徒たちと真正面から向き合った】

【その真摯な姿勢は生徒たちの心をつかみ、あっという間に打ち解けた】

【だが、ひとりだけ打ち解けられない生徒がいた】

生徒1
「先生さよならー!」

矢的猛
「おう!さよなら!気をつけて帰るんだぞ!」

生徒2
「先生!また空手の組手に付き合ってくれよな!」

矢的猛
「いいぞ!手加減なんてしてやらないからな!」

純子
(まだ1週間も経ってないのに、もう皆と仲良くなってる・・・凄い)

矢的猛
「さよなら!」

純子
「ひっ!?えっと・・・」

矢的猛
「おっと、驚かせてしまったかな?ごめんよ純子くん」

純子
「わ、私の名前・・・」

矢的猛
「おっと、またまたごめん。女の子にくん付で呼ぶのはまずかったかな?」

純子
「いえ・・・私の名前、覚えていたんだと思って」

矢的猛
「当たり前じゃないか、この学校の生徒の名前はみんな覚えたさ」

純子
「全校生徒をですか?私達のクラスだけじゃなくて?」

矢的猛
「そうだよ」

純子
「やっぱり・・・凄い先生ですね」

矢的猛
「もちろんみんな覚えるのは簡単じゃなかったさ」

純子
「どうしてそこまでできるんですか?実習が終わったら別れるのに・・・」
「またこの学校に来られるか分からないのに・・・」
「それに私達3年生は来年には卒業していなくなるんですよ」
「もう二度と会えないかもしれないのに」

矢的猛
「たしかにそのとおりだ」

純子
「だったら」

矢的猛
「でも、それで終わらせるのは寂しいじゃないか」

純子
「寂しい・・・ですか」

矢的猛
「そうさ。君の言う通り二度と会えない人がいる事もある」
「でも、もしかしたらまた会えるかもしれない」
「もし再会できたら僕はとても嬉しく思える」
「だから1人でも覚えておきたかったんだ」

純子
「けど・・・相手は先生の事を忘れてるかもしれませんよ?」

矢的猛
「そうだね・・・僕が皆を覚えていても皆が僕を忘れる事もあるだろう」

純子
「だったら・・・無駄じゃないですか」

矢的猛
「そうは思わないな」

純子
「どうしてそう言い切れるんですか」

矢的猛
「自分が誰かに覚えてもらえるという事は嬉しい事だろう?」

純子
「それは・・・嬉しいですけど」

矢的猛
「だからさ」
「僕たち教師は授業で生徒のみんなに勉強で覚えてもらうことばかりだ」
「逆に教師側は同じ授業で覚える事はほとんどない」
「それだとなんだが不公平に思えてしまってね」

純子
「だから・・・私達を覚えようと?」

矢的猛
「それだけじゃないけどね」

純子
「他にどんな理由が?」

矢的猛
「何も難しい事はないよ。僕が相手を覚えていて、そのとき元気な顔が見られたら」
「元気な顔が見られて良かった!忘れないでいて良かった!」
「他の人から見れば些細かもしれないけど、そんな嬉しくなれる気持ちが好きなのさ」

純子
「・・・!」

矢的猛
「そんな気持ちが少しでも分かってくれると、僕は嬉しいよ」


そして現在
純子の同窓会SAGAその三