ゆうぎり
「・・・・・・」ぽー
●●
「どうした?」
ゆうぎり
「いえ・・・こん宿、なんや居心地がよろしくて・・・どことなく遊郭を思い出しますわ」
●●
「それはそうだろう。ここは元は遊郭だった宿だからな」
ゆうぎり
「まあ♪」
●●
「かつて遊郭街のあった地の中で、こうして宿にしているのはここだけと聞く」
ゆうぎり
「こうして●●はんと共に辿り着いたんも、巡り合わせに思えますなあ」
●●
「もしかして、来たことのあるところだったりするか?」
ゆうぎり
「さて・・・百年以上も経てば様変わりしてますからなあ。分からんもんどす」
●●
「辛いことを思い出すようなら・・・宿を変えてもいいんだぞ?」
ゆうぎり
「構やしまへん、こう見えても楽しい事ばかりでありんしたから♪」
●●
「流石は伝説の花魁だ」
ゆうぎり
「今日みたく外を回っては遊郭で休む、そんな昔を思い出しんした」
●●
「外回り・・・花魁道中とは違うのか?」
ゆうぎり
「ふふ♪わっち、実は遊びで外を連れ回される事も多かったんでありんす」
●●
「ほう・・・明治とはいえ遊女の外出は厳しかったのではないか?」
ゆうぎり
「わっちを遊郭に売ってくれた女衒の旦那がおりんしてなぁ・・・そん人が堂々と連れ出してくれたんでありんす」
●●
「そいつは随分と権力のある奴だったのだな・・・」にやり
《まあな》ドヤァ
ゆうぎり
「旦那はわっちの腕を見込んで日ノ本中の遊郭を連れて回ってくれたのでありんす」
●●
「ほう・・・全国ツアー公演のような事をしていたのか」
ゆうぎり
「あい。その女衒の旦那は今でいう幸太郎はんみたいな仕事でわっちとずっと一緒でありんした・・・♪」
●●
「伝説と語られるのも納得だな。当時でそれだけできた花魁は二人といなかっただろう」
ゆうぎり
「北の地から南の果てまでと・・・忙しない日々でありんした♡」うっとり
●●
「・・・好きだったんだな、その女衒が」
ゆうぎり
「あい・・・最後の遊郭では夫婦(めおと)にならないかと身請け話も持ちかけてもらいんした」
●●
「人妻だったのか。初耳だな」
ゆうぎり
「いいえ・・・結局、夫婦にはなれやしまへんでした」
●●
「・・・・・・少し部屋を出てみるか?廊下や中庭の雰囲気も遊郭の名残があって面白いぞ」
ゆうぎり
「あい・・・♪では一緒に見て周りましょうか?」ぎゅっ
《部屋を出ると別の客の会話が聴こえてきた》
そこにいたのは