青葉「え?」
侍「巌流島などという場所に行ったことは一度もないのだが…ああ、なるほど」
侍「拙者は正規の英霊ではなくてな。『佐々木小次郎』という名を被っただけの亡霊にすぎん」
青葉「えっと、じゃあ佐々木小次郎という人は…」
侍「うむ、存在しておらん」
青葉「そ、そうなんですか…では生前は何をしてらっしゃったんですか?」
侍「他よりも少々裕福だった農民の息子でな、長男でもなかったし特にやることもなかったから剣の修練をずっと行っていたのだ」
侍「おそらく拙者が『佐々木小次郎』として呼ばれたのも『燕返し』ができるというだけであろうよ」
青葉「なるほど…では佐々木さんは本来の名前も有名だったんですか?たとえ名前を被っただけだとしてもその強さは佐々木さん自身が身に着けたものだと思うのですが」
侍「確かに剣術は自分一人で修練したものだが拙者は別に名が売れたわけではないし、そもそも名乗るべき名前を持っておらん」
侍「拙者はただ、剣を振り続けただけだからな」
青葉「では、燕返しはどんなきっかけで思いついたのでしょう?やっぱりツバメを斬ってみようとか思ったんですか?」
侍「そなたの言うとおりだ。ふと、燕を斬ってみようと思い立ってな」
侍「刀を振り回してみたもののこれが全く当たらない。どうにかしてみようとしては見たものの燕は風の流れに乗ってひらりひらりと避けてしまう」
侍「そうして月日がたち、ようやく拙者は燕を斬ることに成功した。その時編み出したのが『燕返し』だ」
青葉「なるほど…そしてその剣術で相手をバッタバッタと斬ったんですね!」
侍「いや?」
青葉「え?」
侍「拙者は生前対人戦をしたことがなくてな…燕返しも完成させた直後に拙者がぽっくり死んでしまったのだ」
侍「故にこの戦いは面白い。思う存分剣の競い合いができる」
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