モ「母はいつも言っていた。『私の愛しい息子よ。あなたは騎士となり、王を倒しなさい』とな」

モ「そうしてオレは一度だけ母に連れられ物陰から王を見た。『あれがあなたが目指す相手。倒すべき敵。殺さなければならない王』と母は言うが、オレにはとても不可能だと思った」

青葉「…それは、どうしてですか?」

モ「完璧だったからさ。その裁定も、剣術も、戦術も完璧すぎるほどに完璧だった」

モ「だから、母には悪いが殺すことはあきらめてオレは騎士になり王に仕えることに決めた」

青葉「母親から倒すべきと言われている王のもとで働くのは楽しかったんですか?」

モ「ああ、楽しかった。おそらくあの時は己が一番輝いていた時期だろう」

モ「だが、そうした日々が長く続くはずはなかった。業を煮やしたモルガンによってオレの素性は明かされ、どうやったのかは知らないがオレがアーサー王のクローンだと知った」

モ「オレは歓喜したね。誰よりも焦がれ、誰よりも遠い人だと思っていた騎士王がこれほどまでに身近な存在であったこと」

モ「そして何より、オレが『騎士王の血を受け継ぐ唯一の騎士』だったからだ。これがどういうことかわかるか?」

青葉「えっと…後継者候補…いや、次の王になることができること…ですよね?」

モ「そうだ。この事実を聞いた後オレは急ぎ王の元へ馳せ参じ、事の次第を報告した」

モ「全てを、何一つ包み隠さずに。俺が次の王にふさわしい理由も何もかもな」

モ「だが、あの王は全てを聞いた後もいつもと何も変わらずこう告げた」

『―――なるほど。姉の奸計とはいえ、確かに貴公は私から生まれたものだろう。だが、私は貴公を息子とは認めぬし王位を継がせるつもりはない』

青葉「……………」

モ「確かに王位について話をするのは早すぎたかもしれんし、ましてや王位継承など話をするべきではなかったかもしれん」

モ「そんなことよりも、オレには『息子と認めない』ということが信じられなかった」

『―――息子と認めぬと。そうおっしゃるのか、騎士王よ』

モ「オレは、例え後継者問題が絡むから公的には認められなくても。王位継承者になることができなくても」

モ「騎士王の息子である、という点だけは認めてもらえると思っていた」

モ「よくよく考えれば、モルガンによって無理やり作られた子など王にとっては禍以外の何物でもない」

『いいだろう。その言葉、必ず後悔させてやる』

モ「この時、オレは決意した。“父を貶め、この十年間で父が為したすべてを無に帰そう”とな」

青葉「なるほど…モードレッドさんの母君の『モルガン』さんとは、どんな方だったんですか?」

モ「魔女だ。父上にとっては異父姉にあたる」

青葉「ふむふむ…その、話し難いかもしれませんが最後の戦いと、それまでに何があったのか聞かせてくれませんか?」

モ「何があったか、だと?」

青葉「はい。他の騎士の方々にもお話を伺ったんですが、できればモードレッドさんサイドの方から見たお話も聞きたいな、と…」

モ「フン、いいだろう」



Mordred interview2