メ「アオバ。ペルセウスの武装としてイメージするものはどんなものですか?」
青葉「そうですね…。鏡の盾、羽の付いた空飛ぶサンダル、大きな袋、姿を隠すマント、鎌ハルペーですか?」
メ「ええ、大体合っています。で、鏡の盾ですが、あれはソナーとレーダーを兼ね備えたものでした」
メ「なのでペルセウスは鏡の盾で魔眼を跳ね返したのではなく、盾とレーダー・ソナーを併用することで魔眼を避け、羽の生えた空飛ぶサンダル『タラリア』で私の攻撃を避けつづけていました」
メ「彼は『この戦いでは、絶対に盾から目を離さない』と己に暗示をかけ、私を直接見ないようにして戦っていたのです」
青葉「ふむふむ…。ペルセウスはギリシャの英雄として非常に有名な存在ですが、当時から強かったんですか?」
メ「いえ、当時はまだ英雄ですらなく神々によって乗せられただけの若造でした。だからあの時私は蚊が体のまわりを飛び交っている程度にしか感じなかったのです」
メ「……当初、彼は華々しく怪物を討伐し凱旋しようと考えていました。が、怪物が棲んでいた『形のない島』に入るとそのような思い上がりはすぐに掻き消え、最短で怪物を見つけ、最短で怪物を倒し、最短で首を狩り、最短で脱出するのみとなりました」
メ「真の英雄であるならいざ知らず。この戦いを以て英雄たらんとするペルセウスにゴルゴンを倒す術は無く」
メ「もし、倒す術があるとするならば。それは、怪物自身に自らを封じさせるほかはありません」
青葉「…?どういうことでしょう?」
メ「『形のない島』には『
他者封印・鮮血神殿』という、中に入った侵入者をドロドロに溶かし血液の形にして吸収する結界が張ってあったのですが、もう一つ、これと対になる結界がありました」
メ「『
自己封印・暗黒神殿』。この結界は対象に絶望と歓喜の混ざった悪夢を見せて、その力を封じるモノです」
青葉「…あの、その説明だけを聞くと相手の内側…というか、精神に作用する結界ですよね?跳ね返せるような代物ではないと思うのですが…」
メ「ええ、本来ならば跳ね返すことなどできなかったでしょう。しかし、彼にはそれを為すことができる道具が手元にあった」
メ「『キビシスの袋』。反転する世界の概念。この袋は瞬時に膨らみ、裏返しとなって彼を包み込みました」
メ「この時、『袋の内側であるのは外側』となり、相手の内側に放たれる『
自己封印・暗黒神殿』を鏡のように返したのです」
メ「こうして怪物はまだ自我があったころの記憶を悪夢として見せられ、動きが止まっている間に―――ただ一度きりの反撃が下された」
メ「こうして、無敵であるはずの怪物は自らの結界によってメドゥーサに戻り、夢から覚めるようにあっけなく討伐されました」
メ「―――これで以上です。かなり古い話ですし、少々細かいところに脚色がありますが」
青葉「有難うございます。今の話によると、その『キビシスの袋』によって跳ね返されたんですね。というか、鏡の盾ってレーダーの類だったんですねぇ…」
青葉「今の話を聞いたうえで、いくつか質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
メ「なんでしょうか」
青葉「そのぅ、話を聞く限りペルセウスもまた被害者というか、何というか…騙されていたように聞こえるのですが」
メ「確かに、彼もまた神々に乗せられ、死地に送られた一人です。その点では同情の余地はあっても憎悪を向けるほどでもないのです。ですが…」
メ「それでもやはり個人的に気に入らない。後に立派な人物になるのですが、それでもです」
青葉「あはは…、ありがとうございます。ではもう一つ、ライダーさんは先ほど『自己封印・暗黒神殿は対象に絶望と歓喜の混ざった悪夢を見せる』とおっしゃっていましたが、どのような夢を見たんですか?」
青葉「も、もちろん答えにくいことでしたら無理に話さなくても大丈夫ですから」
メ「……内緒です」
青葉「そ、そうですか…」
メ「ただ、悪夢とは言いましたが、私には決して悪いものではなかったのです。夢の中とはいえ、もう二度と会えない人と会うことができたのですから」
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