湖「彼の王が女性であったと知った時、私は一人の少女に王の重圧を背負わせたことを知り、罪悪感にさいなまれることになったのです」

青葉「では、なぜランスロットさんはギネヴィア姫と関係を持ってしまったのですか?」

湖「ギネヴィア様は王が女性と知ってもなお王を敬愛し、その生き方に倣おうとしていました。しかし、それを貫き通すにはあまりにも普通でした」

青葉「普通すぎた、とは?」

湖「彼女は王と王妃、男性と女性が理想のみで成立していると信じ、理念の尊さだけが人と人を結びつけるものだと固く信じていました。しかし彼女はじきに孤独に耐えられなくなっていった」

湖「結局のところ、彼女は『理想に殉じることのできる女性』ではありませんでした。私は王妃に王との関係を相談され、そのままずるずると関係を持ってしまった」

青葉「そして…そのまま関係は続いてしまったと?」

湖「はい。アオバの言うとおりそのまま関係は続いてしまい、モードレッド率いる騎士たちによって私たちの関係が白日の下に晒された」

湖「私は捕縛に来たガウェイン卿の兄弟を斬り、不義の罪にて火刑に処せられるはずだったギネヴィア様を救出し止めに入ったガウェイン卿の兄弟を殺害、派遣された追手をすべて撃退しフランスに渡り、私を慕ってついてきた騎士と共に軍を編成し私という裏切り者を討伐するために追ってきた彼の王の軍勢と戦っていました。その時に…王がいない間、摂政に任命されていたモードレッドが反乱を起こしました」

青葉「それは、つまり…」

湖「私が、すべての引き金になった。彼の王はドーヴァーの戦いで勝利し、ブリテンに上陸することには成功したもののガウェイン卿は戦死してしまい、カムランの丘にて最後の戦いが行われました」

湖「私は自分の軍を率いて合流しようとしましたがもう間に合わなく、ブリテンは二つに分かれて滅亡し、私は出家した後修道院で死にました」

青葉「ほかの騎士の方々はアーサー王が女性だとは知らなかったんですか?」

湖「先ほども話した通りほとんどの騎士は女性だと気が付かなかった。しかし一部の騎士は気づいていました」

青葉「その方々はどうされたんですか?」

湖「ほとんどの騎士はそのまま仕えていました…が、やはり不満を持つ者もいたようです」

湖「ある日のことです。我らの国に攻め寄せた軍を撃退するために住民を逃がしたうえで国境の村を焼き、結果見事敵軍の背後をつくことに成功し撃破しました」

湖「ですが、この後一つのうわさが流れました。『わざわざ村を焼く必要なんかなかった。王は民のことを考えているのか』と。王が女性であると知っている騎士には女に率いられている、という不満もあったのでしょう」

青葉「…」

湖「そして一人の騎士がこう言い残して城を去りました。『王は人の心が分からない』と」

湖「真に心無いのはどちらか。王は国を愛した。その為に己の人生と人間性を封印した」

湖「キャメロットで一人孤立しながらも、彼の王は最後まで国を、民を愛した」

湖「しかしその心は人々には伝わらなかった。…きっと私はその騎士の言葉を聞いた時に狂ってしまったのでしょう」

湖「始まりから終わりまで、だれにも愛されなかったのは、だれだったのか」


Lancelot interview2