青葉「では、次に行きましょう。こんなに兄上を慕っていらっしゃる牛若さんが、謀叛だなんて有り得ないことですが…どうして頼朝公はそのような誤解をされたんでしょう?」

牛若「誤解などはしていませんよ、青葉。あの時、兄上が私を討つのは当然のことです」

青葉「当然とは?」

牛若「道理、とでも言いなおしましょうか。義仲を倒し、平家一門を滅ぼし、最後に残った兄上の敵が私だった。それだけの話ですよ」
牛若「世間では権力争いで殺すとかいろいろ噂されていました。ですが―――――」
牛若「私は納得していました。私は兄上のように政治など分からず、大切な何かが欠けていた」
牛若「そんな、そんな前時代的な輩がいては兄上の目指す世界など造ることはできません」

青葉「だから殺した、と」

牛若「はい。後は知ってのとおり私は奥州に逃げ、兄上は執拗に追いかけ、最終的に衣川で殺されることになります」
牛若「当初兄上が追ってきたことに対しては『おかしいな。これは道理が通らない』と思ったものですが…」
牛若「損得よりも感情を優先するのが人間です。私は最後までそれに気づくことができず、改められなかった。それだけの話です」

青葉「なるほど、今まで単なる謀反とその討伐だと思っていましたが…いやはや、なかなか深い事情があるようです」
青葉「では次に参りましょう。えー、牛若丸さんの戦いの動機についてです」

牛若「はあ、動機ですか」

青葉「ええ。戦いに限らず、どんなことをするときにも何かしらの動機があると思うんです」
青葉「ですので、牛若丸さんの戦う理由をひとつ教えてもらえないかな、と思いまして」

牛若「私が戦う理由は一つだけです。ただ“兄上に褒めてほしかった”から」
牛若「今は兄上ではなくて主殿ですけどね」

青葉「それだけ、ですか」

牛若「ええ、それだけです。そのために、相手を倒すために最も効率的な手段を選び、徹底的な勝利を挙げ続けました」
牛若「全ては兄上のために。ですが―――結果としてそれが兄上が私に刃を向ける原因となったのは、まあ、致し方のないことでしょう」

青葉「そう、ですか…」

牛若「ええ。後悔があるかと問われれば…まあ、私はただ褒めてもらいたいばかりで、大切な何かが欠けていました。それを最後まで改めることができなかったのは、兄上に対して申し訳なかったと思っています」

青葉「…ありがとうございます!これで牛若丸さんへの質問は以上です!ところで、最後にちょっと確認したいことが……」

牛若「なんです?」

青葉「さっき、『弁慶』さんともちょっとお話させて貰ったんですけど、あの人ってひょっとして……ヒソヒソ」

牛若「……驚きました、その通りですよ。キシャとやらも侮れませんね」

青葉「やっぱり!」




青葉「ではですね、今回のお相手は牛若丸さんでした。お話を聞いて思い出したのが、……ええと、誰が言ったのかまでは思い出せないのですが『憧れは理解から最も遠い感情である』という言葉ですね」
青葉「悪意を持って行動なんてしてないのに、どうしようもない方向に物事が転んで行ったように感じましたね。では、次のお相手は『武蔵坊弁慶』さんです。お楽しみに!」
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