青葉「…」

紅茶「彼を捕え、裁判所に送ったのは彼の友人だった」

紅茶「その友人は怖くなったらしい。『その男は自分が好きだから力を貸しているのだろうと思っていたが―――その実。俺が大衆の敵に回れば、容赦なく俺を撃つだろう』と」

青葉「……その友人は彼を裏切ったんですか?」

紅茶「いや。友人は裏切っていたのではない」

紅茶「この男が人間的なつながりで仲間だと思っていたが、どんな相手であっても『大衆にとっての悪』になれば容赦なく正義を執行する悪鬼だったなら」

紅茶「だから―――その友人は『暴走した正義の味方』を陥れずにはいられなかった」

紅茶「友人は気づいたそうだ。今まで倒されてきた人間は自分の未来の姿だと。力を持つ限りいつかは自分も倒されると」

紅茶「だから、友人は裏切ってはいない。最初から裏切っていたのは『正義の味方』の方だった」

青葉「その……エミヤさんはその友人を恨んだりはしなかったんですか?」

紅茶「かつての彼も、今の私も友人を恨んだことは一度もない。ただ一つ心残りだったのは―――」

紅茶「私が消えるときは正しい糾弾の元で消えるのだと思っていたが…」

紅茶「誰かに憎まれたからではない。ただ、“誰かの利益にならないから殺された”」

紅茶「遥か過去に胸に抱いた、理想だけを心の寄る辺にしてきた男の当然の末路だ」

      『―――より多くの人々を守る』

紅茶「彼は彼が今まで切り捨ててきた人たちと同じように、彼自身もまた人間性を剥奪されて消え去った」

青葉(涙目)

紅茶「おっと、すまない。湿っぽくなってしまったようだな」

紅茶「まあ、なんだ。理想に殉じ、理想だけを追ってきた男の末路という、一つの教訓として聞き流してほしい」

青葉「す、すみません…」

(ガチャッ)

衛「○○、いるかー?」

紅茶「ふん、小僧か。こんなところに用があるのかね?」

衛「チッ、なんでお前がここにいるんだ」

紅茶「これでも私はここのサーヴァントなんでな。ではこれで私は失礼するとしよう」

青葉「えっあっ、貴重なお話、ありがとうございました!」

(ガチャ バタン)

衛「なんだ、あいつ」

青葉「えっと、あなたは……?」

衛「あっ、すまない。俺の名前は『衛宮士郎』だ。邪魔して悪かった」

青葉「いえ、話の切りもよかったですし問題はないですよ」

衛「そうか。じゃあ、俺はアイツに用があるから」

(ガチャ バタン)

青葉「……ん?衛宮、エミヤ……いや、まさか……青葉、大変なことに気が付いてしまったかもです…!」



青葉「さて、今回のお話はちょっと考えさせられるものでした。『正義の味方』は誰かを救えても自分は幸福にはなれないのでしょうか……では、『突撃!青葉の英霊インタビュー』次回をお楽しみに!」
Emiya interview3