青葉「ではですね、マリー・アントワネット王妃との関係を教えてください!」
デオン「王妃様との関係?王女様と騎士の関係、じゃあダメかな?…ふふ、冗談だよ」
デオン「王妃様から服を貰ったことが、始まりだったかな」
青葉「服ですか?」
デオン「うん、服。私はいつも竜騎兵の制服を着ていたんだけど、本当は私が男装をしているんじゃないか?なんて噂が立っていたのさ」
デオン「で、事情をしらないマリー様が服を贈ってくれたんだ。『いつまでも男装をしているのはかわいそう』といってね。そのぐらいかな?」
青葉「それだけ、ですか?」
デオン「ああ。私は騎士といっても軍人であり、外交官であり、スパイだった。それは事実さ」
デオン「フランス王ルイ十五世の私的スパイ機関に所属していた私は王様に会う機会はあった。だけれどマリー様に会う機会というのはほとんどなかったんだ」
デオン「私はフランス王家に忠誠を誓った。それは生前もサーヴァントとなった今も変わらないことだ。そういうことなんだよ」
青葉「なるほど…」
青葉「では次に行きましょう!デオンさんはリア・ド・ボーモンという名前でスパイをしておられましたが、具体的にはどんな活躍があったんですか?」
デオン「うーん…基本的にはフランスのために各国の情報収集だね。他には各国の重要人物とのパイプ作り。それがメインかな」
デオン「初めての任務はフランスの国書をロシアの女帝エリザヴェータに渡すことだったんだ」
青葉「渡すだけ、ですか?」
デオン「正確には渡して持ち帰ることだね。当時のロシアは…というより当時のロシアの宰相ベストジェフが親英反仏で、フランスとの国交は断絶していたんだ」
デオン「だけれどフランスとしては何とかロシアとの国交を取り戻したかった。でも国交が断絶している以上まともな方法ではロシア国内には入れない。だから」
青葉「潜入という形をとったんですね」
デオン「その通り。私は一緒に派遣されたダグラス・マッケンジーの姪であるマドモワゼル・リア・ド・ボーモンとしてロシアの首都サンクトペテルブルクに向かったんだ」
デオン「その後、紆余曲折があったけれど何とか女帝エリザヴェータに謁見して国書を手渡すことに成功し、その返事を持って帰国することができた」
青葉「紆余曲折って何があったんですか?」
デオン「潜入したのはいいんだけどね、ベストジェフに私たちの存在を感づかれてしまったんだ。しかもダグラスはシベリア行きになるのを恐れて国境まで逃げてしまってね、あの時はさすがに参ったよ」
青葉「うわぁ…」
デオン「私は副宰相ヴォロンツォーフに助けを求めたんだ。彼はベストジェフの政敵だったからね。さらにどうも私の姿は彼にとって好みだったようで、いろいろと手助けをしてくれたのさ。女帝エリザヴェータの教師として彼女の部屋に入れるようになったのも彼の手助けがあってのことだよ」
デオン「こんな所かな」
青葉「なかなか波乱万丈でしたね…。それで、エリザヴェータの返事はどうだったんですか?」
デオン「『国境回復を承諾する』。あの時の王様の喜びぶりは今でも思い出せるよ」
青葉「確かデオンさんは計三回ロシアに派遣されましたよね。あとの二回はどうだったんですか?」
デオン「二回目はその翌年かな。ダグラスが全権公使になって私が大使館書記に任じられて、サンクトペテルブルクに派遣された。ちなみにその時はリア・ド・ボーモンの兄であるデオン・ド・ボーモンとして行ったんだ」
デオン「その際にダグラスがまたやらかして更迭されるというトラブルもあったけれど、何とか成功させることができた」
デオン「三度目もそうだね。園遊会やパーティを開催してからの外交折衝や裏取引が主な目的だった。まあ、ちょっと羽目を外し過ぎて王様から苦情が入ったりはしたけどね」
デオン「尤も、エリザヴェータが亡くなった後のピョートル三世は三ヶ月で玉座から引きずりおろされて、次に皇帝となった女帝エカチェリーナはフランスとの条約をすべて無効化するという暴挙に出てしまった。結果としてフランスの立場はさらに悪くなってしまうけれど、これ以上は蛇足かな」
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