夢の中の僕はサッカーが上手くて、アツヤと一緒に楽しそうに笑ってた。
もしパラレルワールドというものが存在しているのなら…、きっとあれは、「あの日雪崩が起きなかった世界」の“僕”なんだろうね。
そこにはキャプテンって呼ばれても物怖じせずに応えて、相手のチームを冷静に分析して、試合に勝っている僕がいた。それを当然と思っている“僕”がいた。
自分が負けるはずがないって、自信に満ち溢れてる顔をしてた。
僕はこんなに悩んでるのに。たくさん苦しい目にだって遭ったのに。
家族もいない。サッカーも出来ない。今もこうやって嘆いていることしか出来ないのに…、僕の憧れた「完璧な自分」が、当たり前のように存在してた。
酷い夢だと思ったよ。
だったらこの世界の僕はなんなの?
別の世界ではあんなにも輝いて生きているのに、どうして僕には何もないの?
ねえ。僕、どうして生きてるの?
……もしもあの日、雪崩が起きていなかったら。
そんな事、何度だって考えたよ。もしサッカーの試合が無ければ。もしお父さんとお母さんが応援に来ていなければ。もし別の道を通っていたらって。
一人ぼっちになったのが辛くて、何度も現実から逃げようとして。だけど結局僕は一人で、家族もみんな死んじゃってて。
いくら考えたって意味が無い事ぐらい分かってたよ。
だって僕の家族は、あの日雪崩で死んだんだから。
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