(我ながらなんてワガママな事を考えてるんだろう、ただ喜んでもらえたらそれで良かったはずなのに)
(自己嫌悪に陥りかけたその時、ろぼが「あのね」と小さく零す)

…ぼく、今日いっぱいお菓子もらえてすごく嬉しかったんだ。
早く食べたいなー、なにが入ってるのかなーって、ずっと考えてた。
でもちゃんからチョコレート貰って、初めて甘いものを「食べたくない」って思っちゃった。

(えっ…)

(三度のメシより一度のオヤツを優先する、いや優先すると怒られちゃうから我慢してるけど暇さえあれば甘いもので口をモグモグさせているろぼが…「食べたくない」?)
(どういう意味なのかという疑問と、まさか私の手作りが嫌なのかという不安に一瞬頭が真っ白になる。しかしろぼはギョッとしている私に一瞬だけ視線を合わせたあと、予想に反して頬を染めた)

だって、食べたらなくなっちゃうんだもん。
ちゃんの気持ちごと、形に残しておけたらいいのに。

(ハート型のギフトボックスで口元を隠しながら、もごもごと照れくさそうに呟くのを見て私は思わず絶句した)
(なんてずるいことを言うんだろう、だってそれじゃまるで私のだけ特別のような言い方だ)

(……っ、えと…)

…な、なんか変な事言っちゃったー!えへへ。
そうだ、お返し楽しみにしててね!ぼくもお菓子作っちゃおうかな~!

(あはは、た、楽しみにしてる、ね)

(なんとかこのむず痒い空気を断ち切ろうと、社交辞令のような約束を交わしてそれぞれ自分の席へ向かう)
(積み上げられた他のお菓子になんて目もくれず、いまだ私からのチョコレートを優しい瞳で見つめ続けるろぼに、ぎゅっと締まるような痛みを胸に感じた)
 
(そんなのって、さみしい)