こっちが探しに行くって言った手前、そうしないわけにいかないだろー。
最近の子がどんなもん好きなのかなんてサッパリだから、随分悩んだんだぜ。

(ほい、と白い紙の手提げ袋を渡される。中には白い箱と包装されたマカロンが入っていた。なんでも店員さんに「今流行りっぽいのください」とバカ正直にお願いした結果、こうなったらしい)

おじょーさんのことだから、他にも山ほど貰ってんだろ~?お返し。

(いっぱいってほどじゃ…あ、そういえばおじさん英語とか強い?)

(いつの間にやらおじさんは煙草を銜えていて、上着のポケットに入れていたケータイ灰皿に灰を落としながら「なんで?」と聞く。私は学生カバンからろぼとガミに貰ったメッセージカードを取りだして見せてみた)

(いや、お返しと一緒にこういうのがついてたんだけど)

どれどれ………あ~…これお前にあげたのってどっちも男?

(うん)

そのどっちかのこと、好き?

(え、ふ、二人とも好きだけど)

いやそういう意味じゃなく…。はあ、青春だねー。
ちょっとこっぱずかしくて、とてもおじさんの口からは詳しく言えませんわ。

(ええっ教えてよ!)

学生は勉強するのが仕事だぜ、自分で調べなさい自分で。そいつらの事が好きなら尚更な。というかそういうのが周りにいるのに、何で俺にまで用意しちゃったかねキミは…。

(?だっておじさんのこと好きだもん)

っ…ゲホッ!ゲホッ!

(わ、大丈夫?)

け、煙、変なとこ入っただけだ、ゲホッ…。
…あ゛ー、そうだな。ついでに俺もひとつ課題を出してやろう。

(ハテナを浮べて首を傾げる私に、おじさんは「うーん」と頭を掻いたあとビシッと人差し指をつきつける)

You turn me on!ばーん!

(ご丁寧に効果音付きで発砲の真似事をされたので、一応胸をおさえて呻くぐらいにはノッてあげたけれど、何のことかさっぱり分からない)
(さっそく意味を問いただそうとしたが「だからお勉強しなさい」と頭をぐしゃぐしゃ撫でられ、はぐらかされてしまった)

さて、用事も済んだことだし。遅くなる前におじょーさんも帰れよ。

(また会える?)

…そうだな。今度はメシでも奢ってやるよ。

(珍しく肯定的な返答に私は嬉しくなって大きく頷く)
(おじさんは私が見えなくなるまで、公園のベンチで小さく手を振り続けてくれた)

…なーにがメシでも奢るだよ!馬鹿か俺は!この歳でいまさら!
いい加減本気にするぜ、くそ…。





You turn me on!
(お前がその気にさせたんだ!)

 
ホワイトデーだから会いにきてくれたんですか?