(鍵を開けてドアノブに手をかけた瞬間、強い力で腕をひかれた)
(突然視界が真っ暗になり、ざらついたジャケットの感触が頬に伝わって)
(一呼吸分の間を置いてから、ああ今抱きしめられてるんだなって理解した)
(誰に?)
(誰ってそりゃ――)

(がっ…!?)

「おやすみ、」

(聞いたことが無いトーンで、耳の中に直接吹き込むみたいに名前を呼ばれた)

なっ…ななななな
 
ドアノブに手をかける