(とんちんかんな返答をするおじさんに痺れをきらして、カバンから綺麗に包装されたチョコレートを取り出し目の前に突きつける)
(おじさんは口を開けたまま何度か瞬きを繰り返した後に、ようやくそれがなんなのか把握したようだ)

ば…ばれんたいん?

(正解)

お、俺に?まじ?

(マジです)

(頷くと、おじさんは「マジかー!」とだらしないほど目尻を下げた)

縁もゆかりも無さ過ぎてすっかり忘れてた!
課金アイテムじゃないバレンタインチョコなんておじさん初めて!

(か、かきん…?)

(さっきまでゴロゴロしていたのであろう、くせっ毛だらけのモサモサ頭に上下スウェットではしゃぐおじさんは滑稽極まりないのだけれど、やったー!と子供のように喜ぶ姿があまりにも嬉しそうで、つい頬がゆるんでしまう)

なにお前、わざわざチョコ渡すためにウチに来てくれたのか?
可愛い奴だなぁ!

(デレデレしっぱなしのおじさんに、「お礼にお茶の一杯くらい出してくれてもいいんですよ」と少しおねだりしてみたけれど、途端に困った顔をされてしまう)

…あがるのはダメ。だからもうちょっと危機感持ちなさいよおじょーさん。
ほら、家の近くまで送ってやるから。

(お返しは来月でいいんだっけ?と問われ頷くと、「じゃあ今度は俺がお前を探す番だな」とおじさんは微笑んだ)
 
そうじゃなくて!ハッピーバレンタイン!