「はぁ…わかった、今回は諦める…」

項垂れながら言う○○を見て須賀が笑う。

「…わざと、私に振り込んだ。と?」

黙っていた透華が険呑な声で問いかけた。

「あぁ、すまなかったな。だが…麻雀の勝ち負けに拘る性質ではなくてな」

「………衣、私はこの方に目にモノ見せて差し上げたくなりましたわ」

「…奇遇だな、衣もだ」

こんなふざけたことをされれば当然だ。
この男は、許せない。

「やれやれ…恐ろしい状況だな」

一片ほどもそんなことを思っていないように言いながら牌を流す須賀。
そしてそれに続いて○○も。
内心の苛立ちを隠すこともなく衣と透華もそれに続く。


東場第一局四本場。

数手打って清一色の七対子、ドラ2、赤1の聴牌。

透華はツモ切り。
衣も同じくツモ切り。
○○はツモ牌を手に加えて、手牌から切る。
須賀は先ほどと同じく確認せずにツモ切り。

そのまま数手進むが聴牌の気配は衣だけ。
そして誰も鳴かなければ海底牌を引くのは衣であり、それが衣の和了牌。
仕掛けずに待って衣を象徴するような役、海底撈月で和了し須賀を飛ばすというのも悪くない。

鳴かれてもすぐに衣が海底牌を引けるように戻せば問題ない。
そうと決まれば少し待つことにしよう。
……誰かに聴牌の気配があるようなら予定を変えることになるかもしれないが。

衣回想6。