数巡進むがまとまりのない牌ばかりが来る。いまだに役に繋がりそうにない。
そんな中、唯一楽しそうに打っていた○○の手が止まった。
何かあるのか、そう疑問に思うと同時に○○の纏う雰囲気が変わった。
楽しげだった雰囲気は、凛と張り詰めた雰囲気になり、そして花が綻ぶような柔らかな雰囲気。
そしてすっと息を吸って、宣言する。
「カン」
萬子の九。カンドラは萬子の八。
「カン」
筒子の五。カンドラは筒子の四。
「カン」
索子の一。カンドラは索子の九。
「ラスト、カン」
萬子の二。カンドラは萬子の一。
「ツモ、嶺上開花、四槓子、ドラ16」
死刑宣告のような和了宣言。
それでいて、暖かさや優しさが含まれているような気がした。
そして、そんな○○に対して私の心が震える。
これはきっと歓喜。
自分以上に強い相手がいるということ。
その相手と巡り会えたこと。
そして、目標となる相手が目の前にいること。
「対局、ありがとうございました。
こんなことを言うのもどうかと思うが、楽しかった」
それだけを言うと卓から離れていく○○。
それを追うように、自然と体が動いていた。
扉をくぐり、廊下で追いつく。
そしてその手を掴んで、声を発する。
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