このまま流局するかと頭によぎるが、思い出すことがあった。
○○が呟いた海底撈月という役。
実力を考えればほぼ全員が聴牌していてもおかしくない。
そしてこのまま誰も鳴かなければ、和了しなければ海底牌を引くのは○○だ。

まさかと思いながらも嫌な予感がする。
そして誰も鳴かず、和了せず、○○が海底牌を引く。

「ツモ、海底撈月、ドラ4」

海底撈月という珍しい役。それをまるで当然のことのように和了する。
悠然と引き、特に驚いた様子や喜ぶ様子もなく和了の宣言をする○○。
あの呟きは自分の和了を言い当てたものだったのか、と考えてしまった。
そして、牌を流しながら○○がまた呟く。

「……混一色、二盃口、ドラなし。焼き鳥回避と」

焼き鳥を回避、ということはもう一人の男子が和了するということ。
まさか、と思いながら次の局へ。

南場三局。八巡目。

「つ、ツモ!混一色、二盃口、ドラは…な、なし…です…」

ずっと奪われるだけだったもう一人の和了。
○○の呟いた通りだ。
これは和了を言い当てていると考えるべきだ。
偶然で済ませないほうが良い。

点棒を渡し、牌を流す○○がまた呟く。

「嶺上開花、四槓子…ドラは16か」

出てきた役は役満。そしてドラ16という言葉。
これが○○の和了ならば逆転される。いや、飛ばされる。
そのとき脳内に警鐘が鳴り響いた。ような気がした。

南場四局、オーラス。

配牌は壊滅的に悪い。今までにこんな配牌はなかったと言えるほどに。
左右を見れば険しい表情の二人。この二人も配牌が悪いのだろうか。
ただ、対面に座る○○だけはどこか楽しげに理牌をしていた。

照との出会い8。