菫に案内してもらってたどり着いた会場にはすでに二人待っていた。
荒川憩ともう一人は男子の準優勝者…だったはず。
菫と控え室を出る前にモニターに写っていた人だ。
とりあえず卓について最後の一人を待つ。
…心なしか、男子の顔色が悪いように見える。
あれは見覚えがある。私と打った後に良く見る顔だ。
つまり、男子の優勝者はそれだけの強さを持っているということ、なのかもしれない。
そんなことを考えながら、少し待つと、会場に近づいてくる足音が聞こえてきた。
コツ、コツ、という小気味良い音。
顔を上げて入り口を見れば、人影。
凛とした雰囲気の男子。確か名前は○○。
まっすぐ卓に歩いて来てスッと頭を下げて、よろしく。と一言だけ。
今まで対局してきた強い相手のような雰囲気はない。どこにでもいるような、そんな人だった。
けれど、卓についた瞬間、雰囲気が変わった。
それを感じたのか、荒川さんから警戒するような気配、準優勝の男子はさらに顔色が悪くなっている。
そして私は、この雰囲気を少しだけ知っている気がした。
・
→