「よっしゃ!ツモ!国士無双、完成!!」
幾度かのツモ順を得て、本当に国士無双を和了った。
血の気が引く感覚はない。むしろ体の芯が熱くなるような感覚。
「どうや!チマチマやるよりこっちのほうがおもろいやろ!!」
楽しそうに、嬉しそうに笑う江口につられたように口元が緩む。
「麻雀は派手に和了ってこそ楽しいもんやで!」
昔、友人に言った言葉を江口が口にする。
そうだ、確かにそうだ。
派手なほうが楽しい。高い点数を奪う方が楽しい。皆と楽しく打てるほうが、断然良い。
忘れていたことを思い出した。昔は自分もそう思っていたはず。
今の江口は、昔の自分とまったく同じだ。
麻雀が楽しくて仕方ない、子供な自分と。
そんな相手が目の前にいるのなら、勝ちにこだわり続ける必要はないのかもしれない。
勝つことよりも、楽しむことを優先しても良いのかもしれない。
そう思えた。だから…この対局を全力で楽しむことにしよう。
「おー、なんやええ顔になったやん」
「…ここからが本番だ、俺も、派手に行くぞ」
対局が始まって和了りと点数計算以外で言葉を発するのは久々だ。
今は気分が良い、言葉を返すのも悪くない。
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