そんなことを思いながら対局は始まった。
いつも通り、安手の即和了りを刻む。
一度、二度、三度。
相手が聴牌する気配があればすぐに和了る。
相手の配牌が良さそうなら和了る。
相手に少しでも流れが生まれそうなら和了る。
いつも通りだ、これで勝てる。
そのまま次の局。
配牌が悪い。それもあり得ないほどに。
いつも通りの打ち方をしようにもこれでは和了れない。
それに先ほどから江口の動きが気になる。
こちらを見てつまらなそうな顔をするのはわかる。
ただその瞳には今まで対局してきた人間の中で一番強い光が灯っていた。
その光がなんだったか、牌を切りながら考える。
現状自分も含めて誰も聴牌していない。
誰からもその気配は感じない、動きもない。
そろそろ誰か聴牌するだろうと思う、それが自分であれば良い。
そう思いながら江口が牌を切るのを待っていた。
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