タクシーに乗って龍門渕へと向かう。
運転手が何か話しかけようとするが隣でぶつぶつ言っている○○を見て困った様子だった。
バックミラー越しに目が合ったが首を振って運転に集中するように促す。
察してくれたらしく小さく頷いてそのまま前を向く運転手に好感が持てた。
余計なことをしない、仕事をこなす相手。悪くない。
特にすることもなく、手持ち無沙汰になったが…咲に渡された本でも読むか。
最近、人気らしく、だが挿絵のないライトノベルのようなもの。らしい。
あまり興味はなかったがなんとなく主人公が俺に似ているという理由で渡されたものだ。
タイトルさえ知らず、今になって初めて確認するが…これはどういうことか。
タイトルは…『コードギアス 反逆のルルーシュ』
………見なかったことにしてそっと鞄の中にしまう。
コードギアス、ルルーシュ。どこかで聞いたことのある単語だ、いや、本当に。
「……あ、ギアスか。それおもしろいよな」
読んだことがあるのか、お前。
「ルルーシュがイケメンすぎるんだよな、もやしだけど」
誰がもやしだ、誰が!
「良い作品だよなー…ただ、死ななくても良い人が死んだ気がするし、ちょっと切ないっつーか悲しいっつーか…」
…誰のことだろうか、心当たりはある。
「それにルルーシュの最期が…」
「………何度読んだ?」
「えーっと…十数回?」
暇人かお前は。
というかもしこの本が俺の世界について書いてあるならこいつは俺のしてきたことを知っているのか。
いや、今は須賀京太郎だ。俺とイコールで結ばれることはない。
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