「あ、待て待て。まだ話は終わってないぞ?折角だからセーラとの出会いから…」
「運転手、早く停めろ。馬鹿の息の根を止めなければならない」
惚気続ける○○と苛々しているせいか殺気立つ俺に心底困ったように笑う運転手。
常識的に考えれば停めるわけがないのはわかっている。
実際に停められたとしても放り出すことはしない。はず。
そんな車内の状態だったが龍門渕が近づいたことによって変わった。
「…まだ話したいけど、もう着くな。
京太郎、少しだけ付き合ってくれるか?」
「………少しだけならな」
…不思議な感覚だ。先ほどのこともあってさっさと龍門渕で降ろして帰れば良いのに何故か楽しく感じてしまう。
無駄な言い合いや馬鹿げた掛け合いが久々だったからかもしれない。
もしくは遠慮なく言って、相手からも返ってくることがこの世界ではなかったからか。
おかしな話、からかわれたことや自分勝手に話を進める姿が前のみんなを思い出させた。
…奇妙な感傷に浸っている必要はないか。
ただ、もしかしたらこの男は俺にとってかけがえのない友人になれる。そんな気がした。
……きっとそれは間違っていないだろう。何故かそんな確信があった。
「あ、終わったらセーラとの話の続きな!」
…まぁ、聞くだけなら聞いてやるか。
当然全部聞き流すがな。
・
END.