巌流島…かつて二刀と長刀の剣士による戦いがあった剣士にとっての聖地である

その聖地巌流島に…二人の剣士が数百年の時を超えて再び向かい合っていた


「……………」

一人は総髪が目を惹く線の細い美青年…しかし、より目を惹いたのは彼の持っている刀…四季崎記紀が作りし中で最も美しい刀…薄刀・針である

「……………」

対するもう一人は黒髪で引き締まった体つきの大男…彼は何も持ってはいなかった…否、彼は武器という物を持たない…それ故に彼自身がいながらにして一本の日本刀なのである

「それにしても…あんたやっぱスゲーな」

大男…虚刀流七代目当主鑢七花が青年…錆白兵に素直な賛辞を溢す

「………なにが…でござるか?」

「いやだって、海を俺ととがめが乗ってた船ごと断ち割るわ、その後とがめに襲い掛かってきた鮫を遠間から両断するわ…あんたの剣技が為せる技ってやつか?」

嫌みなく皮肉もなくただ思ったことをそのまま伝えただけとも言える七花の台詞

「いいや…あれは拙者の剣技のみにござらん」

しかし、錆はそれを否定した…あの人知を超えた技は…理解を超えた業は己の物だけではないと

「へぇ、それじゃあ…その『針』の特性なのか?見た感じただの脆い刀にしか見えないけどな…」

「これ以上…言葉は必要でござるか?」

錆はこれ以上語らう必要はないとばかりに一方的に会話を打ち切った…

「………そうだな…剣士であるからには…刀であるからにはこれ以上の言葉はいらないか…」

七花もそれを受けて構えを取る…虚刀流の中でも基本とも言える待ちの構え…『鈴蘭』

「虚刀流七代目当主鑢七花…参る」

七花はその構えのまま日本最強…錆白兵に名乗りを上げる

「全刀流錆白兵…拙者に…ときめいてもらうでござる」

錆白兵も『針』を抜き払い名乗りを上げた

「ああ、お望み通りときめいてやるよ…ただしその頃にはあんたは八つ裂きになってるだろうけどな!」

互いの決め台詞が決まったのを受け、その場にいて一部始終を見ていた長髪白髪の奇策士とがめは右手を振り上げ

「では、いざ尋常に…」

二人の剣士に開戦の合図を告げる!

「始めぇ!」
『巌流島の決闘』