私の認めたあなたへの思い時が蝕み色褪せ朽ちたとしても
思い出してね
誰と何処でいたって、ほんの瞬き程度でかまわない
せめてもの、失くさないでね
ってね
切なくなるぜ
真っ白なまま輝いていた恋文も
時間の流れにはかなわない
切ない
幼くさせる、チリのようにさせる
新緑が色を変えるように
セピアになるね、心も想いもなにもかもが
時の流れには抗えませんか
姿形を変えても受け入れられるかしらね
ほっと一息吐いてから、無理やり深呼吸すると
口元の羽毛が少し臭うから
はやく冬も流れてしまえばいいのに
過ぎる影を追う必要もないし
なにの轍か、はしゃいで後をつけるのは子どもたちだけだし
よくわからないね
影が染み付いていても知らんぷり
あなたの部屋で夢を見て
思い返す
僕も影の一つになる日が来るのか
最悪それでも構わないと思えている自身があることにも嫉妬していたり
それでも夢見ている
青い風が新緑をもて遊び僕達の足首を擽る
彼女たちとあおいうみではしゃいでいる
橋をわたって帰ろうか
やるせなくってもカーテンを閉じるんだ
髪の潤いも気にしない
枯れていたって、愛おしいものさ
ただ、届かないもどかしさ触れられない虚しさ
溺れていたいだけだと思っていた
というのも嘘だったようです
何がほしい?あなたの口から言葉にしてごらんなさい
この世にはあなた以外の全てが存在する
だから、あなたは何を求めても咎められはしない
騙し騙し生きてゆくよ
忘れてくれ
誰にだってこんな日くらいあるだろ
小さな冬の結晶すらもてあそべない
横たわる身体を目の前に無力も受け入れる
どこまで往こうか
もう一度朝まで語り明かしてみたかったり
叫びたい
環境がね
色々変わっていったんだよ、早苗さんが死んでからも
命を目の前にしているのかもしれないんだ
受け止められそうにもなくてね
こんなにも尊い灯りだったなんて
役者でいたかった
脆いな、二足歩行も
壁に貼りついている
見据えなければいけないのに
吹き飛ばしたいな?
溜め込むなよ大和姐さん
(2:25:38から3:11:58)今日すべてを失うかもな
やはり馬鹿は繰り返し続けるぜ
「コロンビアン・ネクタイって知ってるか」
大和は朦朧とする意識の中でその声を聞いた。身体中が、いたい。
「1948年から1958年の10年間に渡って、コロンビアで内戦が勃発した。今日ではこの時代をラ・ビオレンシアの時代と呼んでいる」
己の下顎から一本の腕が伸びていることに大和は気付いた。目の前の化物に下顎をがっちりと掴まれている。後頭部に岩肌のごつごつした感触と、ぬるりとした血液の感触を感じる。
「ラ・ビオレンシアとは暴力という意味のスペイン語だ。この時代、コロンビア国民は自由党派と保守党派の二派に分かれて殺し合った」
状況を打開しようと動かした足が空を掻く。その時になって初めて、大和は己の身体が空中へ持ち上げられていることに気がついた。化物の腕に手をかけるがビクともしない。漸く大和は自分の置かれた状況を把握し始めた。
「その殺し合いの中で、見せしめとしての処刑を行うために、保守党派と自由党派の両陣営が好んで用いたのが、コロンビアン・ネクタイと呼ばれる拷問処刑方法だ」
艤装の事を思い出し、大和は思わず笑い出しそうになった。私には戦う手段がある、箱入りだった自分には兵器としての自覚が足りないのかもしれない、そう思った。幸い、主砲のうち1つはまだ生きていたし、副砲もその半数は発射可能だった。生きている砲の照準を前方に合わせる。この至近距離でぶっ放せば自分もただじゃすまないなという考えが頭をよぎったが、次の瞬間大和はありったけの砲弾を目の前の化物に一斉に叩き込んでいた。
轟音が耳を劈き、 射撃の反動で大和の身体が背後の岩壁にのめり込む。間髪入れず、射撃で生じた衝撃波が大和の全身を貫く。少し遅れて、肉片が大和の全身に飛び散る。飛びそうになる意識を大和は必死で繋ぎ止めた。
だが、大和の下顎にかけられた手が緩むことは無かった。まだ死んでいない……霞がかった意識の中でもう一度斉射しようとした瞬間、激痛がはしった。思わず呻く。痛みを堪えつつ砲の照準を合わせようとして、大和は絶句した。艤装が消えていた。実際には僅かにその残骸が残り滓のように背中にへばり付いてはいたが、全ての砲身が大和の身体から切り離され、足元でその骸を無残に晒していた。
「……るか、……い、聞いてるのか」
発射の際の轟音で一時的に失われた聴力が戻ってくる。目の前の醜い肉塊ーー大和は化物と呼んでいたーーが、肉塊自身の体液に塗れた腕で、大和の頬を軽く張りながら、何事か話しかけていた。
「よし聞いてるな。今のはちょっとびっくりしたぜ。痛めつけといたからもう反撃はできないと思ってたんだが……凄まじい耐久性能だな。ちょっと呆れたぜ。まあ、今さっきお前の兵装全部捩じ切っといたからもう抵抗は無理だがな。諦めろ」
肉塊に埋もれた無数の目が、大和を映している。その目に愉悦の光を見、大和は絶望した。
「さて、コロンビアン・ネクタイの話の続きだ」
大和はただ、化物の話を呆然と聞くことしかできなかった。抵抗の術が失われた今、大和を待っているのは死だった。
「コロンビアン・ネクタイとは」
そう言いつつ目の前の化物は、その身に間間と生やした腕の一本を突き出す。大和は首を背けようとしたが、下顎を掴む化物の腕がそれを許さない。
大和の目の前に伸びてきた腕の先端には鋭利な爪のついた大小様々な指が数十本並んでいる。その指の内の一つ、直径が5cmほどある指が素早く伸びたかと思うと、次の瞬間大和のなまっ白い喉にするりと突き刺さった。
「〜〜っ!〜〜っ!」
大和の喉元から、鮮血が間欠泉のごとく噴き出す。大和は激痛に耐え切れず声をあげようとしたが、声にならない声と息の漏れる音が聞こえただけだった。化物の爪が頸動脈を裁断し、声帯をズタズタに引き裂いたのだ。
化物は楽しくて堪らないといった様子で笑い声を上げながら、喉に突き立てた爪を一気に引き下ろした。今まで経験したことのない激痛に大和の身体は痙攣した。白い喉元に紅の亀裂が走り、そこから噴き出した大量の血潮が、喉元から伝って全身を赤く染めていく。
「この様に喉を縦に切り裂いた後」
化物は細い指を数本、喉の傷口に滑り込ませた。さらなる苦痛に大和の身体が跳ねる。いたい。大和はもはや、ものを考えられなくなっていた。ただただ耐え難い激痛だけが彼女の傍にあった。その痛みの激しさは、彼女の脳を毀すのに十分だった。指は、喉に開いた傷口から口内へと抜けたかと思うと、大和の舌を掴む。そしてそのままゆっくりと傷口へ戻り始めた。
「その傷口から舌を引っ張り出すという拷問処刑方法だ」
大和の喉に開いた深紅色の裂け目から、真っ赤な血に塗れた舌が顔を覗かせ、だらりと垂れ下がっていた。「この、喉元から垂れ下がる舌をネクタイに見立てたのが、コロンビアン・ネクタイの名前の由来だ。非常に残酷で悪趣味な処刑方法だと人は言う。だがしかし、目の前でこうして見てみても同じ台詞を言えるものだろうか。私はとても言えない。非常に美しいよ。白い喉元に咲いた赤い花の様だ。大和よ喜びたまえ、今の君は最高に美しい」
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい……大和の耳には、化物の言葉は届いていなかった。彼女の感覚は全て痛覚に支配されていた。彼女の眼球は裏返って白い強膜を表全面に晒し、股間からは肘も外聞も無く排泄物を垂れ流していた。
「楽しかったよ、素敵な時間をありがとう……大和」
その一言が、大和が聞いた最後の言葉だった。
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