あと少しだよ
あっちだ、あの茂みを超えたら…



着いた!ほら見て、こんなに綺麗!
お前もこっちに来て、一緒に見よう



本当に綺麗だなぁ…
頼み込んで正解だったよ
今日が一番綺麗に月が出るって聞いたからさ

いい所だろう?
前に1人で散歩してるときに見つけたんだ
ここからだとちょうど月の光が湖に照り返されてな、キラキラしてすごく綺麗に見えるんだよ
まるで自然のステージみたいだろ
誰にも教えてないんだぞ?ありがたく思ってくれ。




…ありがと、わざわざついてきてくれて
急なわがまま言ってもさ、お前はいつも快く引き受けてくれるよな
嫌な顔もしないし、しっかり話も聞いてくれるし
だから好きだよ







好きだよ




ふふっ、違う違う
そういう『好き』じゃないよ。




…ちょっと、風が出てきたかな
寒くなってしまう前に、話さないといけないな。




今日無理を言ったのはな、この風景が見たかっただけじゃないんだ
勿論この風景を見せるのも大切な用事の一つだぞ
私が一番気に入っているものをお前と共有したかったんだよ。



…そろそろさ、きっちり伝えなきゃって思って

正直、薄々感じてるとは思うけどな
お前は察しがいいし、私みたいな子供の考えていることはお見通しだと思うけど

それでもやっぱり、しっかり自分の口で伝えたいから、言うよ。



ちゃんと、聞いてて


○○



いや、違うか











○○さん





あなたのことが好きです

ずっと前からあなたのことが好きでした


コーヒーを淹れるあなたの姿が好きでした
皆に振り回されて困ったように笑うあなたが好きでした
不審者から命がけで守ってくれたその背中が好きでした
私のことを、大切だと言ってくれたあなたが好きでした

今までも、これからも

あなたのことを、一番に想っています
あなたを想う気持ちなら絶対誰にも負けないって自信もあります

千夜にだって負けない
青山さんにだって…
絶対負けません


…もう、どういえば伝わるのかさえ分からないくらい
あなたのことが好きです


私と…

私の、恋人になってください。













ふぅっ…


ちゃんと、聞いてたよな?



ん、ならばよしだ




返事

早めにもらえると、嬉しいな
ゆっくり考える時間を…












いらない?

でも、少しは…








……



そっか



バカだなぁ、私…



な、んで…もっと、はやく気付かなかった、のかな…


私のこと、大切って言って、くれたもんな…




いいんだよな?


私、喜んでいいんだよな…?


こいびと、に


なれたんだよな…?

落花流水