翠「ホームシックですね」

チノ「やっぱりですか」

リゼ「ココアのやつ、チノの手前恥ずかしくて言えなかったんだろうなぁ」

翠「知らない街で一人。お友達はたくさんできたけれどやっぱり家族には会いたい」

翠「そんな気持ちの中、お姉さんが会いに来たので余計に心が揺れたのではないでしょうか」

リゼ「あぁ、なるほどな…」

チノ「でもモカさんが帰ってからこっち、そんなそぶりはなかったですけどね」

翠「そうですね。ですが家族が恋しくなった要素がもうひとつあります」

リゼ「というと?」


翠「ふふっ」

チノ「…あ」




翠「そこの、カウンターで自分は関係ないって顔をしながらコーヒー豆を挽いている彼ですよ」

リゼ「○○が?」

チノ(なんとなくわかったかも…)

リゼ「ココアの兄貴って○○みたいな人なのか?」

翠「いえ、そうではなく。おそらく年上の男性である彼に父性ならぬ兄性を感じたのではないでしょうか」

リゼ「兄性…」

チノ「わからんでもないですけど…。ココアさんがお兄さんのこと話してるのあんまり聞いたことないですけどね」

翠「お二人に対して彼の話題を出すのはよろしくないと思ったのではないでしょうか」

リゼ「なんでだ?」

チノ「さぁ。さっぱりサマーソルトです」



翠(かたや想い人、かたや兄のように慕っている。関係に横槍を入れるようで気がひけたのでしょうね)



リゼ「ふぅむ…」

チノ「保登家ってもともと姉兄たくさんのご家庭ですしね。無理もないのかな」

リゼ「私たちは一人っ子だし、親も…あれだしな」

チノ「まぁ…、そうですね」

翠「ふふっ、だからこそあなたたちも彼に甘えたくなるのでは?」

リゼ「ファッ!?べ、別に甘えたいとかは…」

チノ「ないですから。ないですから絶対」

翠「じゃあそういうことにしておきましょうか♪」

リゼ「ぐぬ…」

チノ「なんですかその言い方。ちょっと青山さん、ねぇってば」





翠「お話は、聞いてましたよね?」


翠「どうされますか?おそらくココアさんはあなたを通して故郷の父兄を見ているのだと思います」

翠「高校生とは言え、まだまだ幼い女の子です。寂しさに一人枕を濡らす夜があったのかもしれません」

翠「ひょっとすると『お姉ちゃんに任せなさい』という言葉は不安な自分を奮い立たせる意味合いもあったのかもしれませんね」



リゼ「その…○○。よかったらココアと一度話をしてあげてくれないか」

チノ「あんなのでも一応私の姉貴分ですので。それにずっとあの調子じゃお店にも出てもらいにくいですし」


チノ「…もし、どーしても寂しくて仕方ないなら、一緒のベッドで寝てやってもいいと伝えといてください」


リゼ「頼むよ、○○」


翠「ココアさんはいいお友達をたくさんもっていますね。素晴らしいことです」


翠「私からもお願いしますね。○○お兄ちゃん?」





リゼ「おいなんだそれおい私も呼びたい」

チノ「ほら仕事戻りますよリゼさん。ココアさんの分も頑張って働いてください」

リゼ「チ、チノはなせ!私も!ココアと青山さんだけずるい!」

チノ「はぁ、なんで私の姉貴分はみんな面倒な人ばっかなんですかねぇ」
ホームシック