結局だらだらと服屋で1時間以上も過ごすことになってしまった。
店員さんにも申し訳ないと思ったので一応数着購入はしたが、リゼは少し不満だったようだ。
『あれも買っておけば』だの『それにはあれを合わした方がいい』だの。
自分の服になぜリゼがそこまで執心なのかはわからないが、自分が選ぶよりかはセンスのいいもの選んでもらえたことだろう。
そこは感謝したいが、今度これを着てどこか連れていく約束もさせられてしまった。
自分で言うのもなんだが、自分と一緒に出掛けて楽しいのだろうか。

だが、こうして慕ってくれているのは素直に嬉しい。


チノ「そろそろお昼ですよね、どうします?」

リゼ「私はなんでもいいぞ。でも、そうだな。あまり重くないものの方がいいかな。最近体重も気になるし…」

チノ「いいじゃないですか。どうせ太るのは乳でしょう?」

リゼ「チノおまっ!」

昼食の話からなぜ言い合いに発展するのか。
街中で大きな声で口論しないで欲しい、少し恥ずかしい。
やはりこの子たちも一皮剥けばまだまだ子供か。
店で働いている時は真面目で頼れる存在なのだが、一歩外に出ればこの調子だ。
リゼも相手は中学生なのだからそこまでムキにならずともいいのではないか。
チノがこまっしゃくれているのは今に始まったことでもないだろうに。

チノ「リゼさんの胸が大きいのが悪いんですー」

リゼ「か、勝手に大きくなるんだから仕方ないだろっ!」

チノ「じゃあ分けて下さいよ。いらないなら少しくらい分けて下さいよ!」




そう、まだ子供だ。

自分とは違う、まっとうな人生を歩んできた子たちだ。



リゼもチノも、もちろん他の皆も形は違えど自分に好意的に接してくれるのは本当に嬉しく思う。
こうして一緒の時間を過ごしていると今まで感じたことのない温かく、とても心地よい気分になれる。



だからこそ
自分などが本当にここにいていいのかと不安に思ってしまう。



隊を辞め、この街に来てからは努めて考えないようにしていた。
一度考えるとどんどん沈んでいくことがわかっていたから。

もう戦場に行く必要もない。
銃を持つ必要もない。
人を殺さなくてもいい。

それなのに、自分はまだ拭えずにいる。
硝煙と砂ぼこり、鉄とタンパク質の焼ける臭いがこの体には染みついてしまっているのだ。
そう簡単に自分のやってきたことに区切りをつけられるものか。


日頃のこの子たちのように友人と騒がしく過ごしたことなどもなかった。
そもそも友人と呼べる存在がいなかったのだから。
自分の隣にあったのはいつだって瓦礫と薬莢、死体だけだ。
同じ隊のメンバーと言えどいつ裏切るかわからない。
自分の位の後釜を狙ってか、部下に後ろから発砲されることもあった。


自分にとって、彼女たちは眩しすぎる。
そしてその眩さは、如実に自分の歪みを浮き彫りにする。

ひょっとすると自分はこの子たちに羨望、あるいは嫉妬といった醜い感情を抱いているのかもしれない。
自分もこんな普通の生活を送りたかった。友達を作り、一緒に出掛けたり口喧嘩したり、そして恋をしたり、と。
心のどこかに後ろめたさを感じながらそれでもなお自分がこの子たちと一緒にあろうとするのは心のどこかでそういう気持ちを晴らすため、見苦しくも今になって取り戻そうとあがいているからなのだろう。

本当に、救えない男だ。自分は。




チノ「お兄さん?」

リゼ「おーい、○○どうした?疲れちゃったのか?」

知らぬ間に歩みを止めていた自分へ前を行く2人が声をかける。
その距離が自分とこの子たちの違いを表しているかのようで滑稽だった。
結局自分は、どこに行こうとも何をしようともいつまでたってもあの時のまま。
全く進歩のない、空っぽな存在でしかない。




リゼ「ほら、行こう?」

チノ「まだまだ先は長いんですから、こんなもんでへばってちゃだめですよ」


それなのに
こんなにも醜く情けない自分に、わざわざ寄り添ってくれる。
手を引き背中を押してくれるのだ。


押される力に思わずよろめき転びそうになる。


自分は変われるだろうか。
変わることを望んでもいいのだろうか。
現実から逃げ出し、いやしくもあたたかい日常生活を望む自分をあの人は許してくれるだろうか。

…この子たちと、一緒にいてもいいのだろうか。


少なくとも今だけは
そして許されるのならば、これからもこの子たちと共にありたいと心から願う。

お出掛け5