リゼ「なんかすぐ見終わっちゃったなー」
チノ「まぁボトルシップ買えたからよしとします。もう二度と来ないでしょうけど」
○○「も、もういいのか?」
なんだこれは、どういうことだ。
さすがにあんまりだろう。
なんということだろうか、入館してものの10分で出てきてしまった。
自分が展示物を見ていると先に行っていると走り出したチノとリゼがとぼとぼと戻ってきた。
どうしたのかと尋ねると口をそろえて「飽きた」と言ってきた時は思わず目が点になった。
確かに年頃の少女にとっては大しておもしろ味のない展示物が多かったかもしれない。
館内も驚くほど広いわけでもないし、展示物は読み物が主体だった。
しかしさすがに10分はないだろう。
海軍制服の試着や当時の鉄砲のモデルガンを持てる体験スペースだとかもあったはずだ。
リゼ「あの銃はダメだな。ただの子供だましのおもちゃだったよ」
チノ「船の模型もひどいですね、私が作った方が完成度はるかに高いですよあれ」
ひどい言い様だ。
もう少し歴史を学ぼうだとか、当時の情景を想像して思いをはせるだとかはしないのか。
しないか、この子たちは。
リゼ「どうしようか。まだお昼にもなってないぞ」
チノ「どうしましょうか。お兄さん」
リゼ「どうしよう、○○」
丁度これからどうしたものか考えている最中にきた。
出先で一番困る女性からの質問、『これからどうする?』。
色々意見を挙げても片っ端から難癖をつけられ却下されてしまうというあの質問。
とシャロから聞いている。
自分もそこまで女性経験が豊富といわけでもないので、きれる手札は決して多くない。
この子たちの性格も加味して慎重にカードを選ばなければならない。
○○「ウィンドウショッピングでもするか」
定石。これならば…
リゼ「今欲しいものないや」
チノ「先日、皆さんと買い物行ったばかりです。」
ぬぬっく!!!
外したか…。というか正解が全く見えない。
なぜダメなんだ?この年頃の子は買い物が好きなんじゃないのか…?
リゼ「…なんだかとりあえず買い物させておけばいい的なこと考えてそうだな」
チノ「ですね。安直な…」
リゼ「そもそもそんなに物欲強くないぞ私」
チノ「スイーツ(笑)どもと一緒に考えられていたとは屈辱ですね」
自分のメンタルが容赦ない2人の言葉にボコボコにされる。
どうやら少女の心をつかむのはコーヒー豆のブレンド加減よりも難しいらしい。
すまないが本当にわからない。
(ああ、前日にシャロが『事故らないようにきちんと準備しろ』と言ったのはこういうことか…。今理解できた。)
リゼ「むぅ…。あ!じゃあこういうのはどうかな。チノ、ちょっと」
チノ「はい?」
2人で内緒話をし始めた。こわい。
一体何を考えているのか。本当に10代少女の頭の中は全くわからない。
そう考えると自分はもういわゆる『おっさん』と呼ばれるカテゴリに入っているのだろうか。
何故だか少し胸が痛んだ。
…いや大丈夫だ、まだ枕は臭わないし。
リゼ「よし!買い物行こう!ウィンドウショッピングだ!(ニヤニヤ)」
チノ「早くいきますよお兄さん(ニタニタ)」
2人のどうみても裏がある笑顔におっさんの心は一層震えあがるばかりだった。
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