リゼ「○○!ほらあっち!あっちで海軍の制服を試着できるみたいだぞ!」

チノ「お兄さん見て下さいボトルシップです。見たことないキットです。欲しいです」

リゼ「おお!これはサーベルか!?あっちには短銃も飾っているぞ!」

チノ「お小遣いが…。いやしかし買わないで後悔するよりも買って後悔する方が…ぶつぶつ」



迂闊だった。10代女子の活力を甘く見ていた。

リゼはともかく、チノまでもがこんなに活動的だったとは。
リゼとチノ、趣味嗜好のあまり似通っていない2人でも一緒に楽しめるだろうということで海洋博物館行きの案を選んだのだが、こんなにうけるとは正直思っていなかった。
2人とも普段は比較的真面目な印象を受ける子たち(たまにおかしくなるが)なので、もっと静かにゆっくり見て回るのかと思っていたのだが。


思えば出発する前から、車に乗っての移動時間中も2人ともどこか浮ついていたかもしれない。
船についての蘊蓄でいつになくチノが多弁であったり、リゼが何度もお茶や菓子を勧めてきたり。
楽しみにしていてくれたのは嬉しいが、ここまではしゃがれるとはさすがに少し面食らってしまう。

正直なところを言うと、この2人はあまり会話がないものだとばかり思っていた。
チノは同年代の子と比べてみても大人びているというかどこか達観しているように見える。
ご両親のことや、まだ幼い身で喫茶店のような接客業に深く関わっていることで早熟となったのだろう。
対してリゼは随分と活発で活動的だ。実家の影響かどこか体育会的な考えが強く見える。
あの人の娘だと思えば極めて納得のいくことである。
てっきりそりが合わないのではと勝手に考えてしまっていたが、全くの杞憂だったか。



「ほらなにボーっとしているんだ!時間は限られてるんだからはやくはやく!」

「行きますよお兄さん。売店はあとでまた寄ることにしますんで」


リゼが手を引き、チノが背中を押しながらまくし立てる。
普段見ることのない積極的な2人の様子に若干気圧されてしまうが、楽しみにしてくれているのは確かなようで、それは単純に嬉しく思う。
普段仕事や作業のことばかり考えて、あまりこの子たち自身をしっかり見ることができていなかったかもしれない。
もう今の自分は一般市民なのだ、もっと社会的に生きるようにしなければいけない。
今日一日は、この子たちをしっかり楽しませてあげられるように努力してみよう。

お出掛け2