時雨様は、元は若い招福の神様だったらしい。
それを強欲な人間が商売を繁盛させる為に屋敷の地下牢に閉じ込めてしまって…それを嘆き悲しみ、やがて人を憎んだ時雨様は妖になってしまったんだ。
…時雨様は、自分を不浄だと。卑しい妖だと言っていた。
穢れた名なんて返さなくていい、と。
でも時雨様は、笹田が亡くなったお母さんの形見であるお守りを見つけてくれたんだ。
それは笹田を住処から追い出したくて気まぐれでやった事かもしれないけど…でも、笹田は救われたと言っていたよ。
肝試しで生徒を眠らせた理由も、人が嫌いだからじゃない。その場所に住む妖達との思い出を守りたくてやった事だ。
…優しい、妖なんだ。
時雨様は不浄なんかじゃないと言っていた笹田の言葉は、届いただろうか。
消える直前の時雨様の言葉を、笹田は聞けただろうか…。
時雨